2011年03月27日 (日) | 編集 |
期待どうり、素晴らしかったです。

あらすじ:緑豊かな自然に囲まれた寄宿学校ヘールシャム。そこは、牧歌的な田園地帯にありながら外界からは完全に隔絶され、徹底した管理が行われている謎めいた施 設だった。そんな静かで整然とした環境の中で、幼い頃からずっと一緒に育ってきたキャシー、ルース、トミーの仲良し3人組。やがて18歳となった3人は ヘールシャムを卒業して、農場のコテージで共同生活を送ることに。

ブッカー賞作家カズオ・イシグロの同名傑作小説を映画化した異色のヒューマン青春ストーリー。キャストは「ソーシャル・ネットワーク」のアンド リュー・ガーフィールド、「17歳の肖像」のキャリー・マリガン、「プライドと偏見」のキーラ・ナイトレイ。
※この作品は、思ったことをネタバレ的に書いておきます。
彼らは、目の前の海に、漕ぎ出す事もない。
画面に映し出される、座礁した船が横たわる砂浜。
これを見た時、凍りついたような思いになって、衝撃を受けた。
ああっ、やっぱり。
現実に愕然としてしまったような気持ちにたたき落された。
外の世界から観てしまう自分と、登場人物の思いとのギャップに、
胸が苦しくなる。
マダムが、トミーに、
(絵を)頂いてもいいかしら?と、いとも軽く訊ねる場面もきつい。
魂までは渡せない。
マダムらは、世のしくみを変えようなんて思ってもいない者たちだ。彼らにとってギャラリーは思想遊びにしかすぎず、やがて、病になれば、平然と、目の前の提供者から、欲しいものを奪い取っていく。
あまりに残酷すぎて、やりきれなかった。
原作のエッセンスをうまく取り出し、盛り上げることなく、スパッ、スパッと、場面を、切り変えていってるのが素晴らしい。キャシーがポルノ雑誌を見ていた解釈も驚きだ。

出演者も、たいへん良かったです。
映像化を観て、キャリー・マリガンが、特に良かったな、と思う。
介護人というのは、たいへん孤独な立場であり、かいがしく世話をしたり、励ましたりすることが仕事ではないんですね。死に恐怖する提供者を前に、自分の感情を抑制しておかなければならない。冷たく、寄り添い、死を見届けいくだけで、見送りびと、みたいな人ですね。
小説では理解しにくい深い心境が、切々と伝わってきました。
トミーのきらめく感情を受け取ることが出来たキャシー。
死期を悟った彼女がこれで幸せだというならばそうなのだろう。
彼女達は、自分が生みだした感情を伝えたがっている。
その感情の記憶を、だまって聞いてあげることしか、私にはできない。
言葉からでは受けれない、うずまくような感情が迫ってくるような作品でした。
わたしを離さないで NEVER LET ME GO 2010年【米・英】105分
監督:マーク・ロマネク
原作:カズオ・イシグロ わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
出演:キャリー・マリガン(キャシー)、アンドリュー・ガーフィールド(トミー)、キーラ・ナイトレイ(ルース)、シャーロット・ランプリング(エミリー先生)
★★★★★ 素敵な小作品系です。

◎関連記事→原作本を読んでの感想

あらすじ:緑豊かな自然に囲まれた寄宿学校ヘールシャム。そこは、牧歌的な田園地帯にありながら外界からは完全に隔絶され、徹底した管理が行われている謎めいた施 設だった。そんな静かで整然とした環境の中で、幼い頃からずっと一緒に育ってきたキャシー、ルース、トミーの仲良し3人組。やがて18歳となった3人は ヘールシャムを卒業して、農場のコテージで共同生活を送ることに。

ブッカー賞作家カズオ・イシグロの同名傑作小説を映画化した異色のヒューマン青春ストーリー。キャストは「ソーシャル・ネットワーク」のアンド リュー・ガーフィールド、「17歳の肖像」のキャリー・マリガン、「プライドと偏見」のキーラ・ナイトレイ。
※この作品は、思ったことをネタバレ的に書いておきます。
彼らは、目の前の海に、漕ぎ出す事もない。
画面に映し出される、座礁した船が横たわる砂浜。
これを見た時、凍りついたような思いになって、衝撃を受けた。
ああっ、やっぱり。
現実に愕然としてしまったような気持ちにたたき落された。
外の世界から観てしまう自分と、登場人物の思いとのギャップに、
胸が苦しくなる。
マダムが、トミーに、
(絵を)頂いてもいいかしら?と、いとも軽く訊ねる場面もきつい。
魂までは渡せない。
マダムらは、世のしくみを変えようなんて思ってもいない者たちだ。彼らにとってギャラリーは思想遊びにしかすぎず、やがて、病になれば、平然と、目の前の提供者から、欲しいものを奪い取っていく。
あまりに残酷すぎて、やりきれなかった。
原作のエッセンスをうまく取り出し、盛り上げることなく、スパッ、スパッと、場面を、切り変えていってるのが素晴らしい。キャシーがポルノ雑誌を見ていた解釈も驚きだ。

出演者も、たいへん良かったです。
映像化を観て、キャリー・マリガンが、特に良かったな、と思う。
介護人というのは、たいへん孤独な立場であり、かいがしく世話をしたり、励ましたりすることが仕事ではないんですね。死に恐怖する提供者を前に、自分の感情を抑制しておかなければならない。冷たく、寄り添い、死を見届けいくだけで、見送りびと、みたいな人ですね。
小説では理解しにくい深い心境が、切々と伝わってきました。
トミーのきらめく感情を受け取ることが出来たキャシー。
死期を悟った彼女がこれで幸せだというならばそうなのだろう。
彼女達は、自分が生みだした感情を伝えたがっている。
その感情の記憶を、だまって聞いてあげることしか、私にはできない。
言葉からでは受けれない、うずまくような感情が迫ってくるような作品でした。
わたしを離さないで NEVER LET ME GO 2010年【米・英】105分
監督:マーク・ロマネク
原作:カズオ・イシグロ わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
出演:キャリー・マリガン(キャシー)、アンドリュー・ガーフィールド(トミー)、キーラ・ナイトレイ(ルース)、シャーロット・ランプリング(エミリー先生)
★★★★★ 素敵な小作品系です。

◎関連記事→原作本を読んでの感想
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この記事へのコメント
kinoさん、こんにちは!
原作の感想の方も拝見させて頂きました^^
そうかー先に原作を読まれた方が、このキャスティングや、ロケーションの映像を見て、すごくしっくり来ると感じられたんですね。
監督の手腕は凄いってことですよね。
私はkinoさんほどには感動とかは出来なかったのですが、一杯ある映画の中でも、この映画にしかない・・、なにか特別な作品に仕上がっている、というのは感じました。
原作の感想の方も拝見させて頂きました^^
そうかー先に原作を読まれた方が、このキャスティングや、ロケーションの映像を見て、すごくしっくり来ると感じられたんですね。
監督の手腕は凄いってことですよね。
私はkinoさんほどには感動とかは出来なかったのですが、一杯ある映画の中でも、この映画にしかない・・、なにか特別な作品に仕上がっている、というのは感じました。
2011/03/29(火) 11:02:59 | URL | latifa #SFo5/nok[ 編集]
私も原作→映画と行きました。
設定自体はかなりな奇怪さでしたけど、そこに流れている世界観のようなもの、
すなわち「不条理を受け入れる」ことなど、どういう訳か納得してしまう自分もいました。
でもねえ・・・。 もしも現実にこんな過酷なことがあったら、私だったら彼らみたいになれるかどうか。
たぶんできないだろうなとも思いつつ。。
やっぱり、出来事としてはあってはいけないことだしね。
設定自体はかなりな奇怪さでしたけど、そこに流れている世界観のようなもの、
すなわち「不条理を受け入れる」ことなど、どういう訳か納得してしまう自分もいました。
でもねえ・・・。 もしも現実にこんな過酷なことがあったら、私だったら彼らみたいになれるかどうか。
たぶんできないだろうなとも思いつつ。。
やっぱり、出来事としてはあってはいけないことだしね。
コメントありがとうございます。
監督さんは、この原作の感覚を、大切に作られてるように思いました。
奇妙な部分もあるし、うなづけるような部分もあるし、
観客の気持ちは揺れ動くけど、主人公は感情を押さえきっているというのが、
この作品のミソだと思います。
現実と非現実のエアポケットに入る感覚を楽しむ作品で、原作ファンの監督さんなんでしょうね。
映像的に、静かな原作が、かなり膨らんで観れたように思います。
監督さんは、この原作の感覚を、大切に作られてるように思いました。
奇妙な部分もあるし、うなづけるような部分もあるし、
観客の気持ちは揺れ動くけど、主人公は感情を押さえきっているというのが、
この作品のミソだと思います。
現実と非現実のエアポケットに入る感覚を楽しむ作品で、原作ファンの監督さんなんでしょうね。
映像的に、静かな原作が、かなり膨らんで観れたように思います。
コメントありがとうございます。
原作と同じく、感傷的に盛り上げない作りは良かったです。
>「不条理を受け入れる」
恐ろしいまでの不条理を受け入れているけど、なんとなく、あきらめのような感じを与えないんですよね。人生の意味を知っている人間なんていない、ある種、達観してる強さがあるような。
ひたすら、自分たち三人の感情の中に、価値を見いだしていこうとするところが、苦しくなりますね。
現実的で奇怪な感覚の作品でしたね。
ここで描かれている世界の中では、一般人も、幸せとはいえない暮らしなんでしょうね。
原作と同じく、感傷的に盛り上げない作りは良かったです。
>「不条理を受け入れる」
恐ろしいまでの不条理を受け入れているけど、なんとなく、あきらめのような感じを与えないんですよね。人生の意味を知っている人間なんていない、ある種、達観してる強さがあるような。
ひたすら、自分たち三人の感情の中に、価値を見いだしていこうとするところが、苦しくなりますね。
現実的で奇怪な感覚の作品でしたね。
ここで描かれている世界の中では、一般人も、幸せとはいえない暮らしなんでしょうね。
こんにちは★コメントありがとうございます、
私、小説は読んでいませんけど
読んでる方とはまた感想も微妙に違ってきますよね。
こういうストーリーだとはみじんも思っていなかったので、SF的な話なのにどこか現実味あるというか、そんなリアル感が良かったです。
私、小説は読んでいませんけど
読んでる方とはまた感想も微妙に違ってきますよね。
こういうストーリーだとはみじんも思っていなかったので、SF的な話なのにどこか現実味あるというか、そんなリアル感が良かったです。
コメントありがとうございます、
そこにある彼女達の感情こそ、リアルで確かななものですね。
これは哀しい青春ストーリーであると思います。
魂や感情が抜けたようなルースの遺体は、
映像で観ると、ショッキングでしたね。
原作は、キャリーの一人称で、彼女の学園生活の思い出を、ずっと聞いているような物語です。彼女の話が、なにかずれてて、不思議な感覚にとらわれてしまいます。
そこにある彼女達の感情こそ、リアルで確かななものですね。
これは哀しい青春ストーリーであると思います。
魂や感情が抜けたようなルースの遺体は、
映像で観ると、ショッキングでしたね。
原作は、キャリーの一人称で、彼女の学園生活の思い出を、ずっと聞いているような物語です。彼女の話が、なにかずれてて、不思議な感覚にとらわれてしまいます。
kinoさん、こんにちは!
原作本の感想も読ませてもらいました。
「抑制」という感覚がピッタリくる作品でしたね。
外の世界の私達からすると、やり切れない悲しみで
いっぱいになるんだけど、
登場人物の思いは、淡々としていて「幸せだった」という
言葉すら出てくる。
なるべく彼らの気持ちに沿っていこうと思いました。
彼ら自身は不幸だと思っていたわけじゃなく、
それなりに生き抜いたんだって。
途中で、『オリジナルはクズだ』と言うセリフがありましたね。
ヤク中・ホームレス・売春婦・・・それにポルノ雑誌・・・
実際そうなのか、ただ単に彼らの思い込みなのか、どうなんでしょう?
原作本の感想も読ませてもらいました。
「抑制」という感覚がピッタリくる作品でしたね。
外の世界の私達からすると、やり切れない悲しみで
いっぱいになるんだけど、
登場人物の思いは、淡々としていて「幸せだった」という
言葉すら出てくる。
なるべく彼らの気持ちに沿っていこうと思いました。
彼ら自身は不幸だと思っていたわけじゃなく、
それなりに生き抜いたんだって。
途中で、『オリジナルはクズだ』と言うセリフがありましたね。
ヤク中・ホームレス・売春婦・・・それにポルノ雑誌・・・
実際そうなのか、ただ単に彼らの思い込みなのか、どうなんでしょう?
外の世界の立場から見ると、
従ってるだけみたいに見えるけど、
彼女達は、彼女達なりに、懸命に生きる価値を求めてるんですよね。
それを、静かに語っていくのが、悲しいんですよね。
下層階級の方がオリジナルなのかどうか、それは、わからないです。彼女達は、境遇を比較して、うらやんだり、悲しんだりしませんからね。ポルノ雑誌をみていた理由がオリジナルを探すためだったというのは驚きですね。
従ってるだけみたいに見えるけど、
彼女達は、彼女達なりに、懸命に生きる価値を求めてるんですよね。
それを、静かに語っていくのが、悲しいんですよね。
下層階級の方がオリジナルなのかどうか、それは、わからないです。彼女達は、境遇を比較して、うらやんだり、悲しんだりしませんからね。ポルノ雑誌をみていた理由がオリジナルを探すためだったというのは驚きですね。
さきほど観ました
作られた運命を、そのまま受けとめていく彼らの姿に胸がしめつけられると共に、せめてもの彼らの幸せを願わざるをえません。
「出会えて私は幸せだった」そう思えてるキャシーがせめてもの救い。
彼らにとっては、臓器を提供することが当たり前の事で、それでも懸命に生きている姿に胸が熱くなりましたね
厳格に育てられた彼らには、現状に抵抗するという気持ちすらないのでしょうね。淡々と自分の番を待っている事を考えるとたまらなくなります
作られた運命を、そのまま受けとめていく彼らの姿に胸がしめつけられると共に、せめてもの彼らの幸せを願わざるをえません。
「出会えて私は幸せだった」そう思えてるキャシーがせめてもの救い。
彼らにとっては、臓器を提供することが当たり前の事で、それでも懸命に生きている姿に胸が熱くなりましたね
厳格に育てられた彼らには、現状に抵抗するという気持ちすらないのでしょうね。淡々と自分の番を待っている事を考えるとたまらなくなります
生まれて生み出した魂は、自分たちのもので、
それだけは、決して提供することはできない、
かけがいのない自分たちのもの、を大切にしてるんだと思います。
人生の意味を知っている人なんていない、
マリーキャリガンの表情がなんともいえなかったですね。
それだけは、決して提供することはできない、
かけがいのない自分たちのもの、を大切にしてるんだと思います。
人生の意味を知っている人なんていない、
マリーキャリガンの表情がなんともいえなかったですね。
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2011/04/18(月) 09:32:07 | 労組書記長社労士のブログ
【ネタバレ注意】
『わたしを離さないで』の中には、実に無意味な問いが出てくる。
それは、「彼らは心を持っているか」という問いかけだ。
もちろん、本作はこの設問を追及するものではない。追...
2011/05/19(木) 08:30:27 | 映画のブログ
イギリスの文学賞・ブッカー賞受賞作家カズオ・イシグロの小説を基に、傷つきながら恋と友情をはぐくみ、希望や不安に揺れる男女3人の軌跡をたどるラブストーリー。『17歳の肖像』のキャリー・マリガン、『つぐない』のキーラ・ナイトレイ、『大いなる陰謀』のアンドリュ...
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