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観た映画の感想が綴られてます。ゆったり、更新。
ヒラリー・スワンク IN レッド・ダスト
2009年05月28日 (木) | 編集 |
『生まれつき他者を憎むものなどいない。人は憎しみを学ぶのだ』
(ネルソン・マンデラ)


主演は、2度のアカデミー主演女優賞に輝くヒラリー・スワンク。エージェントの元に送られて来た脚本に感動したヒラリーが、自らプロデューサーに出演を直談判した意欲作だそうです。
南アフリカ共和国のアパルトヘイトが廃止され、ネルソン・マンデラが大統領となり新政権が樹立が、1994年5月で、ほんと、近年の出来事です。本編では、新しい国を目指し行われた『民族和解委員会』の聴聞会というものが描かれています。

ヒラリー・スワンク IN レッド・ダスト1

こういう南アフリカの現状を、まったく知りませんでした。

白人は、犯罪の全てを告白すれば、恩赦で無罪となるというのが『民族和解委員会』聴聞会です。これは、いままでの過去を早急に払拭し、新しい道を歩むためのものですが、人を殺しても、打ち明ければ無罪というもので、そんな、ばかな!というものです。しかも、白人は、自分の罪を受け止め、遺族に謝る気持ちすらなくても構わないんですよ。

見るのも痛々しい場面が多く出るんですが、現実には、もっとひどかったのであろうということが、容易に想像出来ます。画面から来る痛みじゃなく、想像する痛みに観るのが苦しくなります。遺族、黒人の側からすれば、憎しみが増すだけで、新たなる火種となっていったのではないかと思われます。

ヒラリー・スワンクは、やっぱり、社会派映画の方が似合うな。ヒラリー・スワンク演じる弁護士役が、この地での因縁もある脚本にしてあり、ていねいに作られてる作品だと思います。

ヒラリー・スワンク IN レッド・ダスト RED DUST
2004/イギリス/南アフリカ 110分劇場未公開
監督:トム・フーパー
出演:ヒラリー・スワンク/キウェテル・イジョフォー/ジェイミー・バートレット/イアン・ロバーツ/ノムレ・ンコニエニ/マリウス・ウェイヤーズ
★★★☆☆
ヒラリー・スワンク IN レッド・ダスト [DVD]
◎関連記事
マンデラの名もなき看守
インビクタス/負けざる者たち


1998年10月、2年半に渡った委員会の取り組みは報告書にまとめられ、
ツツ大司教からマンデラ大統領に手渡された。
報告書は全5巻。3500ページにも及ぶものだったそうです。

(マンデラ大統領の言葉)
報告書は、相手への複雑な感情や苦しみを呼び起こすでしょう。
それと引き換えに、処罰なき正義を手に入れられるのは、
被害者にとっては受け入れがたい哲学的な問題でしょう。

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第62回カンヌ国際映画祭
2009年05月26日 (火) | 編集 |
パルムドールが決まってましたので、引用しておきます。
2009年5月25日 7時54分[シネマトゥデイ映画ニュース] より

第62回カンヌ国際映画祭

最高賞パルムドール決定!優秀女優賞はシャルロット・ゲンズブールに

第62回カンヌ国際映画祭コンペティション部門の受賞結果が現地時間24日に発表され、最高賞のパルムドールは、オーストリア人のミヒャエル・ハネケ監督『ザ・ホワイト・リボン』に贈られた。菊地凛子主演『マップ・オブ・ザ・サウンズ・オブ・トーキョー』は映画祭の賞には漏れたが、仏の高等技術院(CST)から音響技術のアイトール・ベレンゲル氏に対してバルカン賞(技術賞)が贈られた。

 ハネケ監督がコンペに出品されること5回目にして初めてのパルムドール受賞となった。審査委員長のイザベル・ユペールは、ミヒャエル監督の映画『ピアニスト』の主演女優とあって、受賞は順当といえるが、ユペールは「素晴らしく飛び抜けた映画に御褒美を与えたというだけ」と口うるさい記者たちの声をさえぎった。

 また、優秀女優賞には物議を醸したラース・フォン・トリアー監督『アンチクリスト』(原題)で自慰行為はおろか、性器まで見せる熱演をしたフランスの女優シャルロット・ゲンズブールに。優秀男優賞にはクエンティン・タランティーノ監督『イングロリアス・バスターズ』でナチの大佐を演じたドイツの男優クリストフ・ワルツがそれぞれ受賞した。シャルロットは記者から、「賛否両論の声があったが、この賞をどう受けとめるか?」と問われると、「観客の意見がわかれたことは知っています。でもわたしはラースの才能を信じている」とコメント。また、「受賞を一番最初に誰に伝えたか?」と尋ねられると、シャルロットは母親で女優のジェーン・パーキンにメールで伝えたそうで、「わー! おぉ!」という反応が返って来たという。一方、クリストフは、タランティーノ監督に電話で喜びを報告したそうで、「(パーキンと同じく)『わー! おぉ!』というのが英語で返って来た」と答えて、会見場は笑いに包まれた。
 
受賞結果は次の通り。

【パルムドール】
『ザ・ホワイト・リボン』(独・オーストリア・仏・伊)ミヒャエル・ハネケ監督
【グランプリ】
『預言者』(仏)ジャック・オディアール監督
【審査員特別賞(映画史への貢献と長年の功績を讃えて】
アラン・レネ監督
【優秀監督賞】
ブリリャンテ・メンドーサ監督『キナタイ』(仏・フィリピン)
【審査員賞】
『フィッシュ・タンク』(英国)アンドレア・アーノルド監督
『サースト』(韓国・英国)パク・チャヌク監督
【優秀男優賞】
クリストフ・ワルツ
『イングロリアス・バスターズ』(クエンティン・タランティーノ監督)
【優秀女優賞】
シャルロット・ゲンズブール
『アンチクリスト』(ラース・フォン・テリアー監督)
【優秀脚本賞】
メイ・ファン『スプリング・フィーバー』(ロウ・イエ監督)
【高等技術院・技術賞】
録音技術アイトール・ベルンゲル
『マップ・オブ・ザ・サウンズ・オブ・トーキョー』(イザベル・コイシェ監督)

ウォンテッド/WANTED
2009年05月25日 (月) | 編集 |
弾道が弧を描く~!

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ウェスリー(ジェームズ・マカヴォイ)は、変化のない仕事に行き詰まり、ガールフレンドにもフラれ、自分の人生に嫌気を感じていた。彼に足りないもの、それは人生の不運に耐え抜くための“何か”だった。だが、謎の女・フォックス(アンジェリーナ・ジョリー)が現れた日を境に、彼の環境が一変する。

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スタイリッシュな映像ガンアクションを楽しむ映画なので、ストーリーは、おまけみたいなもの。暗殺集団と言いながら、列車ごと谷に落ちたりして。目立ちすぎ (^_^;)
アンジェリーナ・ジョリー、かっこよかったね!

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ウォンテッド WANTED 2008年【米】 110分
アクション
監督:ティムール・ベクマンベトフ
アンジェリーナ・ジョリー/モーガン・フリーマン/ジェームズ・マカヴォイ/テレンス・スタンプ/トーマス・クレッチマン
★★★☆☆
ウォンテッド リミテッド・バージョン [DVD]

ブラック・ボックス~記憶の罠~
2009年05月21日 (木) | 編集 |
この作品、『ソウ5』に続くソリッド・スリラー・シリーズ第3弾!
と、紹介されてるんですけど・・・なんで?
この宣伝文句じゃ、ソウもどきのB級作品とみられちゃう。
これは、かわいそう。

記憶が交錯するなかなか面白いサスペンスでしたよ。

ブラック・ボックス ~記憶の罠~01

田舎道を走る自動車の前に、突然、自転車が!
交通事故で病院へかつぎこまれた場面より始まります。

彼は、被害者なのか、加害者なのか、どういう事故なのか?

やがて、彼は、退院となるのですが、
これが現実なのか彼の夢なのか、よくわかりません。
彼は、うわごとで、彼の記憶にあるものをすべてしゃべったらしく、
妙に、色気のある妖しい看護師さんに、
それを書き留めたメモ帳を渡されます。

RP50、RP50。
シルヴァン・ガネルに殺される。
テキサスは存在しない。
など、
意味不明の言葉が書かれていて、彼は、それを探り始めるんですが、
警察の取り調べ、駐車場での情事、兄の失踪、殺された女とか、
次から次へと、過去なのか現在なのか、はたまた彼の見ている幻想なのか、
わからない場面が続いていきます。

シーンの連続で構成してる映画なのですが、これの見せていき方が、うまいので、なんだかすべてが疑わしいような不思議な気持ちで観ていけますね。
ずっと奥底に沈めていた記憶の箱を、開いた時、心の救いにつながっていきます。

ブラック・ボックス ~記憶の罠~マリオン・コティヤール

オスカー受賞のマリオン・コティヤール(『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』)も出演しています。大胆なベッドシーンもあり。特に、それが売りの映画ではないですけどね。

ブラック・ボックス ~記憶の罠~ LA BOITE NOIRE 2005年【仏】90分
監督:リシャール・ベリ
ジョゼ・ガルシア/マリオン・コティヤール/ミシェル・デュショーソワ
★★★☆☆
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(2009/05/08)
ジョゼ・ガルシアマリオン・コティヤール

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ソリッド・スリラーシリーズ第3弾!ということは、第2弾!があるの?と思い、調べてみると、ありました!『デス・ルーム』という作品でした。
販売してる角川エンタテインメントさんは、
ソリッド・スリラーシリーズとして、増やしたいようです。
●第1弾 ソウ5 SAW V 2008/アメリカ
これはもう、おなじみ、ジグソウさんの教訓が身にしみる人気シリーズ。
●第2弾 デス・ルーム TRAPPED ASHES 2006/アメリカ
4話オムニバスで、面白くなさそう。デス・ルームというタイトルも(-_-#)

天使と悪魔
2009年05月17日 (日) | 編集 |
シリーズ第二弾!今回は、展開が、スピードアップ!
ちょっと待ってヽ(^凵^ヽ) というぐらい速いけど、面白かったです。

天使と悪魔11
天使と悪魔22

原作は、未読。途中まで観てて、ローマ自体が舞台なので、これは映像化に向いてる作品なんだなーと思って観てました。これは、活字で体験する方向とは、別の方向に、ヴィジュアル的に作っていけるような作品ですね。

土、空気、火、水の四大元素がアンビグラムとなった焼き印が象徴的に使われ、視覚としてたいへん面白いし、タイムリミットに追われるように、次から次へと映し出される旧跡、教会などが、美しい。
駆け足なので、ラングドンは、何の謎を解いてるのか、さっぱりわからないし、
存在感は薄く、ほとんど魅力はない。
歴史あるローマ遺跡の前では、人間が、あまりしゃしゃり出る意味はなく、
建造物、壁画が、主役となり語ってしまう地、これがローマだと思います。

一般観光客が、記念写真を撮ったとしても、
建物をいれようとするあまり、これ誰っ、て言うほど、
ちいさ~い人物になってしまったりするでしょ、そういうものでしょう。
ローマの空気が、そうさせるに違いない。

天使と悪魔 ハバククと天使
どんな美男美女俳優が出てきても、こういう歴史あるものには勝てないのだ。
(ハバククと天使 サンタ・マリア・デル・ポポロ教会)
ラングドンのうんちくは、本の中で、活きるわけだと思う。

天使と悪魔_ユアン・マクレガー
人物的には、トム・ハンクスは、ガイド役に徹してもらうとして、
ユアン・マクレガー(カメルレンゴ、前教皇待従)が作品の主役のような映画です。
天使の羽?で神に近づくとは、思わなかったぞ。

『ダ・ヴィンチ・コード』が、いまいちなのは、『最後の晩餐』を画面にバーンと出さず、謎解きに走ってしまってるせいでもあるし、謎を説いて、ひと区切りして次へという単調な展開が、つらいんだと思います。
今作、『天使と悪魔』は、うんちく話をスピードで流しつつ、映像そのものが語ってくれるような、うまい娯楽作になってるんじゃないかな。〈宗教〉と〈科学〉という背景にあるものも、対照的なアンビグラムというデザインで、理解出来るようになってると思うし。

小説→映画という線上じゃなく、小説VS映画という位置。
モナ・リザの素晴らしさを、言葉で説明するのと、1枚の写真を見せるのでは、まったく違う手順だ、という考えで作ってるに近い雰囲気かと。

天使と悪魔33
システィーナ礼拝堂の撮影用レプリカ、中での撮影は禁止です。

天使と悪魔MAP3

実は最大の謎は、ヴァチカンそのものだと思うんですよね。記録保管所、コンクラーベの風景など、映し出されてるものは、一般には公開されておらず、おそらく推理です。ヴァチカンの絵解きも、楽しめると思いますよ。

天使と悪魔 Angels & Demons 2009年【米】140分
監督 ロン・ハワード
原作 ダン・ブラウン〔原作〕 「天使と悪魔」(角川書店)
脚本 デヴィッド・コープ/アキヴァ・ゴールズマン
トム・ハンクス(ロバート・ラングドン、ハーバード大学教授、宗教象徴学)
アイェレット・ゾラー(ヴィットリア・ヴェトラ、CERN科学者)
ユアン・マクレガー(カメルレンゴ、前教皇待従)
ステラン・スカルスガルド(リヒター、スイス衛兵隊隊長)
アーミン・ミューラー=スタール(シュトラウス、枢機卿)
ニコライ・リー・カース(Mr. グレイ、暗殺者)
★★★☆☆ 

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(2009/05/13)
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天使と悪魔 (上) (角川文庫)
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切腹
2009年05月14日 (木) | 編集 |
一人の浪人、千々岩求女の切腹をめぐって、
仲代達矢(津雲半四郎)と、井伊家・家老、三國連太郎(斎藤勘解由)の
緊迫したやりとりが続く。
1963年度カンヌ国際映画祭・審査員特別賞を受賞しています。

切腹1

最初の方の切腹の場面が、う~、痛々しい。
しかし、この痛みというのが、この作品では、意味を持つ。
今の社会不安のある中で観た方が、切実なのかもしれない社会派時代劇です。

当時、浪人ものの中に「切腹のために庭先を貸して欲しい」と、願い出て、上屋敷より金銭をたかる輩が出没してました。世に失業者があふれていたのです。
そんな折り、井伊家を訪ねたのが、千々岩求女。その日の生活もまま成らぬ状況に迫られていた彼は、妻、子供のため、切羽詰まり井伊家の門を叩いたわけです。井伊家は、たかり野郎が訪ねて来たと判断し、見せしめのため、千々岩求女を、無理矢理、脅かし切腹させてしまうんですね。

この切腹のさせ方がひどすぎる。
千々岩求女は、生活のため、刀を売ってしまって、竹光を差していたのです。
それを、承知で、さあ、腹を切れと、
笑い者にしたうえで、竹光で、無理矢理、切腹させます。
寄ってたかって、弱い者いじめをしたうえでの、なぶり殺しですよ。

こんな非道なこと、武士にもあるまじきで、さらに切腹した後も、刀を売った千々岩求女を、見苦しいだの、武士の風上にもおけないだの、ののしり笑います。

安泰な井伊家で、ぬくぬくと暮らす彼らは、世の痛みがわからないんですね。
大きな組織の中で、感覚が麻痺してしまってるというようなものです。

明日は我が身と考えたりもしないのか、なげかわしい。
苦しみの声を聞こうともしなかったのか。
と、仲代達矢=津雲半四郎が、切々と問いかけていきます。そんな物語です。

切腹2

仲代達矢、三國連太郎、丹波哲郎など、その当時の役者さん、迫力が違いますね。そこにいるだけで、なにか空気まで違う雰囲気を醸し出します。
体面だけ、理屈だけ、を保とうとする武士に、
「武士の面目などとは表面だけを飾るもの」と、
皮肉っていく仲代達矢の迫力に、引き込まれてしまいます。

家具、装飾品など、すっきりとした何も置いてない日本家屋で、やりとりを続ける人物の配置、張りつめた空気感も美しい。

切腹3

切腹 Seppuku/Harakiri 1962年【日】
監督:小林正樹/脚本:橋本忍
出演:仲代達矢(津雲半四郎)/岩下志麻 (津雲美保)/石浜朗(千々岩求女)/三國連太郎(斎藤勘解由)/丹波哲郎(沢潟彦九郎)
1963年度カンヌ国際映画祭 審査員特別賞
感想:★★★★★ 画面から伝わる緊迫感、うーん、すごい。
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まなざしの長さをはかって
2009年05月13日 (水) | 編集 |
タイトルが素敵ですね。
マーラを演じるヴァレンティーナ・ロドヴィーニが、たいへんきれいな方です。

まなざしの長さをはかって1

イタリア北部を流れるポー川河口の小さな村に、
小学校の代理教師として一人の女性マーラがやってきます。
バスを降り立った彼女は、真っ赤なコート。誰もが振り返るような美貌。

彼女を見つめる新聞記者志望のジョヴァンニ青年は、マーラのパソコンのメールを盗み読みし始めたり、自動車修理工ハッサンが、夜な夜な彼女の家の前に立ち、彼女を覗き始めたり。覗きというか、カーテンのない家なので、丸見えのエロチックサスペンスみたいなんですけどね。犬殺しの事件が多発していたり。なんだか、不可解に話は進みます。

まなざしの長さをはかって3

やがて、ハッサンの覗きがばれ、彼女に白い目で見られるのですが、どうも変態男でもなさそうだ、ということだろうか、彼女と彼は、接近していくことになります。

海外を飛び回って、結婚なんて出来そうもないわという自由奔放なマーラと、チュニジア人で苦労し、真面目で寡黙なハッサンでは、まったく思いが違っているわけです。恋というものではなく、彼女が、彼の隠してる心の、痛みやさみしさに触れていく、といったような関係なんですね。

あ~、切ない恋の物語なんだと思わせて、
このあと、後半、意外な展開をみせていくのは、びっくりしました。

まなざしの長さをはかって4
まなざしの長さをはかって5

人と人、都会と田舎、人種、などの距離感、温度差といえばいいかな、そういうものを感じさせていくような物語ですね。
途中、新聞社の方がジョヴァンニ青年に、取材対象との距離のとり方の話をするんですが、これは理屈であって、人と人の関係の間合いは、そんな簡単なものではない。微妙な距離感を語っているようです。
面白いことに、最初の方で、マーラが、みんなに番茶をいれ、飲んだ人の顔が、何この味~となる場面があったりしました。なぜ、番茶なんだろう。


まなざしの長さをはかって La giusta distanza 2007【伊】〈未〉108分
監督:カルロ・マッツァクラティ
出演:ヴァレンティーナ・ロドヴィーニ/ジョヴァンニ・カポヴィッラ/アメッド・へフィアン/ジュゼッペ・バッティストン
イタリア映画祭2008オープニング作品
2008年イタリア・アカデミー賞主要6部門ノミネート
★★★☆☆
まなざしの長さをはかって [DVD]

まなざしの長さをはかって2

鴨川ホルモー
2009年05月12日 (火) | 編集 |
レジャーサークル京大青竜会の秘められた活動とは・・・

鴨川ホルモーポスター
鴨川ホルモー壁紙

「鹿男あをによし」の万城目学の原作、京都が舞台なので観てみましたが、
正直、面白さのツボが違う感じがした。
お話はおもしろいのに、作り方が、変なんです。
映像化にあたって、鬼語を言葉でなくパフォーマンスで表現できるわけですし、式神を視覚として存在させることができるわけです。しかも、京都という舞台が、妖しい世界を持ってるわけですよ。
アイデアでいくらでも面白く出来る材料を持ってながら、なんで、だらっーとした青春学生路線にする必要があるんだろう?劇場を出て、思わず、ゲロンチョリー!って、やってしまうようなテンションに持ってこれる作品だと思うねんけどなぁ。

パンフ読んで、監督がバカやってる映画と答えていたので、これのせいか~と思ったけど、“バカやってる”なんてニュアンスが、関西という土地柄、古都京都に合ってないんですよね。

根本的に、勝手にバカやってもらっても困るわけで、
笑わしたろ、どうや、という気持ちを、うまく受けたげるわけです。
特に、京都は、したたかさを持つ土地柄で、一方的な笑いでは、きびしいですよ。
このへんの、ニュアンスの違いだろうと思います。
こんなふうにしてしまったのは、もったいないですねー。

鴨川ホルモー栗山千明
栗山千明は、ポーズも決まってて、かっこよかったね。

鴨川ホルモー 2009年【日】113分
監督:本木克英
出演:山田孝之(安倍明)/栗山千明(楠木ふみ)/石田卓也(芦屋満)/芦名星(早良京子)/斉藤祥太(三好・兄)/斉藤慶太(三好・弟))/荒川良々(菅原真)/佐藤めぐみ(立花美伽)/藤間宇宙(紀野)/趙民和(柿本赤人)/パパイヤ鈴木(鈴鬼)/笑福亭鶴光(ホルモー解説者)/石橋蓮司(居酒屋「べろべろばあ」店長)
★★★☆☆ 
◎原作 鴨川ホルモー (角川文庫)

白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々
2009年05月09日 (土) | 編集 |
ヒトラー政権に立ち向かった21歳の女性ゾフィーの勇気に
世界中の観客がすすり泣いた感動の実話



兄と私は、ビラで、国民を喚起させたかったのです。
連合軍に敗北する前に。
ユダヤ人の殺戮をやめさせるために。
・・・・・・
ドイツは、世界から見放されます。


白バラの祈りポスター2

信念は死なず。というのには、あまりにも若すぎる (T_T)
まだ、21歳の学生さんですよ、
反ナチス運動を展開した「白バラ」メンバーのゾフィー・ショルが逮捕され、5日間という短い尋問の末の判決、処刑に至るまでを描く。第55回ベルリン国際映画祭で最優秀監督賞と最優秀女優賞を受賞しています。

※「白バラ」とは、1942年6月頃から1943年2月まで、ドイツ・ミュンヘンで6種類の反ヒトラーのビラを作成、配布したり、深夜に街中の壁にタールでスローガンを書くなどの抵抗運動をした大学生を中心としたグループ。

この映画は、ゾフィーと尋問官が、取り調べで、どういうことを話したのか、法廷でゾフィーは何を語ったのかを、近年見つかった資料をもとに、じっくり見せていく内容です。
尋問官は、ゾフィーに罪を認めさせ、思想を変えようとしますが、
彼女の信念は、まったく揺らぐことはありません。
ヒトラーの法には従わない。
私は、良心に従う。と。
しっかりとした表情で、言い切っていきます。
この彼女の態度に、逆に、尋問官が、追いつめられ落ち着きをなくしていきます。

ゾフィーは、心でしゃべってるんですが、
尋問官は、現ヒトラー体制の疑問を感じつつ、いかにもそれが正しいかのような言い訳をしゃべってるにすぎないんですね。

部屋の中で、婚約者のことを話す時の彼女の顔が、やわらかくなるところは、結末がわかってるだけに、悲しいです。

彼女が、空を見上げる場面が、何回か出てくるんですが、
彼女は、何を見ていたんでしょう。
体制から解放され、眩しく、空を見上げる人々の顔を見ていたんでしょうか。

白バラの祈り1

白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々 2005年【ドイツ】121分
Sophie Scholl: The Final Days(Sophie Scholl - Die letzten Tage)
監督:マルク・ローテムント
ユリア・イェンチ(ゾフィー・ショル)
アレクサンダー・ヘルト(尋問官)『ヒトラー~最後の12日間~』
★★★★★
白バラの祈り -ゾフィー・ショル、最期の日々-

ミルコのひかり
2009年05月08日 (金) | 編集 |
ミルコのひかりポスター

ある偉大な音楽家が、演奏する時瞳を閉じていた
音楽に耳を澄ませるためさ
見えなくても音や言葉を聞いてればわかる
からだ全体で感じる
五感をいっぱいに使うんだ

イタリア映画界の第一線で活躍するサウンド・デザイナー、ミルコ・メンカッチの実体験を基に描くストーリー。不慮の事故で失明し心を閉ざしてしまったミルコ少年は、一台のテープレコーダーとの出会いにより新しい世界への扉を開いていく。

ミルコのひかり1

青は、自転車に乗っている時、顔に当たる風の色。

盲学校にはいったミルコが、
色ってどんなもの?と訊ねる友人に、色を教えてあげます。
すごく素敵な感性を持っていますよね。

ミルコの溢れ出る感性は、おさまることはなく、テープレコーダーに音を集め、その音を編集し、ドラマを作り始めます。まわりの子供もどんどん感化され始めます。健常者であるガールフレンドや先生もミルコ少年の作る音に、感性で応え動かされていきます。音は、体で受け止めるもの。
当時、目の不自由な子は、普通学校に通えず、盲学校で職業訓練の勉強し、限られた職業につくことしかできなかったのですが、それすらも変えるような大きな力になっていきました。

ミルコ少年たち、目の不自由な子たちが、こっそり寮を抜け出して、映画館に行くところが素敵なんですよね。もちろんスクリーンは見えてないんですけど、みんなで行って感じる映画館が、すごく楽しそうなんです。

ミルコの歩みを観せ、感動を運ぶ目的の映画ではないです。
一応、映画なので画面はついてますが、ミルコのように、体で感じ、イマジネーションを膨らませる素晴らしさを体感してほしい、というような作品のつくりだと思います。

ミルコのひかり Rosso Come Il Cielo 2005年【伊】100分
監督/脚本/製作:クリスティアーノ・ボルトーネ
感想:★★★★☆
ミルコのひかり [DVD]

ミルコのひかり2
ミルコのひかり3

音の魔術師ミルコ・メンカッチ
この映画の主人公のモデルとなったミルコ・メンカッチは、1961年イタリア、トスカーナ州ポンテデーラ生まれ。楽器をたしなむ父や叔父の影響で幼い頃から音楽に親しみ、ラジオドラマのファンでもあった。8歳のときに事故によって視力を失い、ジェノヴァの全寮制学校に転校。夜になると自分の体内の音が聞こえてくるほど静かなトスカーナから、喧噪にあふれた都会に移り、盲学校で5年間を過ごす。その後、音に対する抜きん出た才能を活かし、イタリア映画界の第一線で活躍する音楽家、サウンド・デザイナーとなる。トスカーナにレコーディング・スタジオを、ローマに音響編集スタジオであるSAM社を設立。本作品の音響編集もこのスタジオでなされた。ボルトーネ監督の一連の作品はもちろん、イタリアを代表する映画のサウンドデザインを手がける。
主な作品に、日本でもロングラン大ヒットの記憶が新しいマルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督の『輝ける青春』(03)、フェルザン・オズペテク監督の『無邪気な妖精たち』(01)、『向かいの窓』(03)、ミケランジェロ・アントニオーニ監督による短編ドキュメンタリー”Michelangelo Eye to Eye”(04)など。


スラムドッグ$ミリオネア
2009年05月04日 (月) | 編集 |
ムンバイのスラム育ったジャマールが、ミリオネアまで、あと1問と迫る!
無学の彼が、なぜ?
彼は、望まなくても、答えを知っていたのだ。

スラムドッグ$ミリオネア ジャマール

Q;スラム育ちのジャマールは、なぜミリオネアになれたのか?
A)インチキだった 
B)ついていた
C)天才だった
D)運命だった

ファイナルアンサー?
野暮な問いかけなど要らない。これは、駆け抜ける運命の物語だから。

スラムドッグ$ミリオネア1

ジャマールくんには、一般出場者のような迷いはありません。
ずばずば、答えていきます。
知ってるから。それだけ。
彼は、知らないことは、知らないだけだし、知らないことを恥じることもないんです。そして、正解しても、そんなに、うれしがる様子も見せません。
次第にわかってきますが、
彼の目的は賞金ではないし、答えることに優越感を感じることもない。
価値観をぶっとばすような痛快なお話で、すごく面白い。

(以下、ネタばれもあります。)

カメラの疾走感と音楽で、
スラムに住む子供が活き活きと映されていきます。
やっぱり、この作品の良さは、この勢いでしょうね。
兄のサリームは、現実的な考え方をし、時折、憎たらしいんですけど、弟ジャマールが純粋でいられたのも、そんな兄がいたからこそかもしれません。

最後のライフラインで、すべてが決まるところに
物語が収束してくるのも、いいですよね。
もともと、テレフォンと言っても、電話かけるとこ、ないんですよ。
彼が助けを求めるところは、ひとつ。
お兄ちゃんのみ。
三銃士の問題なら、必ず答えてくれるわけ。
そして、お兄ちゃんは、彼が望む答えを、きちんとわかっていて、
身を持って、答えを、教えてくれるんですね。
答えは、銃士アラミスではなく、ラティカ。

スラムドッグ$ミリオネア ラティカ
最後の問題で、電話をとるのは、すごいよー。

サリーム兄ちゃんは、(T^T) かわいそうなんだけど、
そう、すべてが、ここに、つながっていた運命だったのですね。
♪Jai Ho に乗せて踊り出すのも爽快!


世界金融危機不安が起こり、
活力あふれるこの作品が一気に浮上してきた感じですね。
まさに、“運命だった” と思います。
SLAMDOG_img2a
答え:D)運命だった

スラムドッグ$ミリオネア Slumdog Millionaire 2008年【英・米】 120分
監督:ダニー・ボイル
脚本:サイモン・ビューフォイ/音楽:A・R・ラフマーン
デヴ・パテル(ジャマール)/マドゥール・ミタル(兄サリーム)/フリーダ・ピント(ラティカ)/アニル・カプール(司会)/イルファン・カーン(警部)
原作:ヴィカス・スワラップ ぼくと1ルピーの神様 (ランダムハウス講談社文庫)
★★★★☆

スラムドッグ$ミリオネアスラムドッグ$ミリオネア
(2009/04/01)
サントラA・R・ラフマーン feat.マドゥミーター

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Jai Ho  ♪Jai Ho~♪Jai Ho~


ボーダータウン 報道されない殺人者
2009年05月03日 (日) | 編集 |
戦慄の内容です。

5000人の少女の悲鳴を
掻き消したのは、
砂漠か? 国家か──?

メキシコとアメリカの国境にある街・シウダ・フアレス。ここで、1993年から2008年までの15年間で、500件にも及ぶ女性殺害事件が起こっている。この数字は確認されている数でしかなく、実際には5000件に及ぶとも推計されている。

ボーダータウン報道されない殺人者_POSTER

自由貿易協定により世界各国の大企業がここフアレスに進出し、マキラドーラと呼ばれる大工場群が出来上がっています。この工場で働かざるおえない少女達が、24時間、家電、パソコンの部品などを低賃金で、作ってるわけです。事件の犠牲者はここで働く女性工員に集中しており、現在も、レイプされ命を奪われる被害者が、増え続けています。
政府も国の利益を優先し、腐敗する警察は捜査をする気もなく、むしろ闇に葬ろうとしています。

こういった現状を訴えるため、
シカゴの新聞社で働く女性記者ローレン(ジェニファー・ロペス)が、この連続殺害事件の取材をするサスペンスとして制作されています。
サスペンスとしても、見応えありましたし、この場所に日本企業も進出し、まったく関係のない遠い国のお話ではありません。
まず事実を知るということだけでも価値のある映画だと思います。

ボーダータウン 報道されない殺人者 BORDERTOWN 2006年【米】112分
監督・脚本:グレゴリー・ナヴァ
出演:ジェニファー・ロペス、アントニオ・バンデラス、マヤ・ザパタ
★★★★☆

◎公式ページ http://www.bordertown.jp/
ボーダータウン 報道されない殺人者 [DVD]

ロッテ・ライニガー「アクメッド王子の冒険」
2009年05月01日 (金) | 編集 |
1926年に上映された世界初の長編アニメ。
全てのアニメーションの原点とも言われている。
ドイツの影絵作家、ロッテ・ライニガーさんが、3年の歳月をかけて製作した。

ロッテ・ライニガー_アクメッド王子の冒険01

動いていない状態でも、充分、美しいのですが、
すごくスムーズに美しく動くのには驚きました。
王女が水浴びに入るところでは、水面が揺れたり、
魔法使いが大蛇や獣に変身して戦います。

ひとりで考え、ひとりで制作していますので、
なにかセリフまで聞こえてきそうだし、
表情まで見えてきそうな感じがしました。
作り手が、熱心に作ってる気持ちが伝わってくるんですね。

最近のアニメでは、まず感じることができないものを持っています。
DVDの特典映像の制作風景は、すごく興味深かった。

アクメッド王子の冒険 ドイツ/1926年/65mm
監督:ロッテ・ライニガー
★★★★★

ロッテ・ライニガー/Lotte Reiniger (1899~1981)
1899年ベルリン生まれ。影絵アニメーション作家、映画監督
幼少の頃、中国の影絵人形劇に魅了され、自身でも切り絵人形と舞台を作成し、影絵劇を家族や友人に披露していました。十代になると、ライニガーは映画に夢中になり、ジョルジュ・メリエスやパウル・ヴェゲナーなどの作品に傾倒していきました。その後1915年になると、15歳でマックス・ラインハルトの劇団に参加し、映像作家としての師事を仰ぎました。
 その後、ウェゲナーの「Der Rattenfanger von Hameln」の製作に携わった後、1919年に自身の初監督作品である短編 “Das Ornament des verliebten Herzens”(美しき魂の飾り) を完成させました。この作品の成功を皮切りに、ライニガーはその後もいくつかの作品を発表しました。
 そして1923年、後の代表作であり世界初の長編アニメーションとなる「アクメッド王子の冒険」の製作に着手し、3年の月日をかけて、1926年に作品を完成させました。特に作品がカンヌ映画祭で上映されると、その人気は一気に高まり興行は大成功を収めました。
 「アクメッド王子の冒険」の成功後も、ライニガーは精力的に短編影絵アニメーションを製作しました。ナチスの台頭によって、作品の製作が制限されると、ライニガーと夫のコッホはドイツを離れることを決意しますが、永住権を取得させてくれるような国を見つけることはできませんでした。そのため、数年の間各国を転々とし、1949年にようやくロンドンに落ち着きます。その後1962年に夫が無くなってからもライニガーは20以上の映画を制作し続けました。
 1981年に82歳で永眠。


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(2006/06/09)

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