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観た映画の感想が綴られてます。ゆったり、更新。
沈まぬ太陽
2009年10月27日 (火) | 編集 |
不屈の魂を描いた叙事詩。
映画化されるということで、たいへん楽しみにして劇場へ向かった。ついに、この作品が、映画化されたという感激が大きい。3時間22分でも長いとも思わないし、もの足りないぐらい。終わってしまうのが、名残惜しい気がした。

沈まぬ太陽K

原作は「大地の子」「白い巨塔」の山崎豊子さん。原作を読んだのは、5~6年前ぐらいかな。御巣鷹山での出来事がこれほど、ひどいものだったのかという衝撃と、日本航空のばかげた企業体質、政治家との癒着に腹立たしさを感じた。そして、この恩地元という主人公が、アフリカの大地に立つイメージがある小説だ。

沈まぬ太陽4

映画は、日航機墜落事故より始まる。亡くなられた方の魂を真摯に受け止め、歩まなければならないということを軸に、原作を、うまくまとめてあります。日本航空、政治家を、えぐっていく部分は、1本の映画では、駆け足気味で、浅くなってしまう。その分、主人公恩地に焦点を当て、彼の耐え抜く姿を通じ、なにかを感じ取ってもらおうという作品で、良かったと思います。渡辺謙は、恩地元にピッタリで、素晴らしかった。

原作のかなりを占めるアフリカ編が、たいへん重要な部分であることが、映画を観てわかったような気がした。恩地といえど、正しい人間ではない。親方日の丸の公務員で高給取りの身分、世のため、仲間のためと、自分に言い聞かせ、先頭に立っていたのかもしれない。あのまま、突っ走っていれば、どうなってたかわからないですよね。
当時、日本を離れた地に身をおいた彼は、巡礼者と言えばいいのか、俗世間でのつきものが落ち、枠から解放されていくような境地だったんじゃないかと思う。アフリカ、遺族のお世話係を経て、深い心の土台、心のありよう自体が、変わったのが、恩地さんですね。

沈まぬ太陽1

123便に搭乗される人々の姿が、映し出され、このあとのことを考えると、じわっーと涙が出てくる。ご遺体は、ばらばらの肉片となっており、暑い夏、見つけ集めていく現場は、凄惨だったようです。判別のつかないご遺体は、人型に包帯を巻かれ、棺に納められました。ご遺族の方は、自分の家族を、ひとつひとつ確認して回ったということだそうです。ご遺族の方のシーンが出るたび、涙が出てきた。

沈まぬ太陽2

アフリカより戻った恩地を待っていたのは、遺族係であった。同時に、カラチ、テヘラン、ケニアと懲罰人事により、僻地を転々とした彼の過去が描き出される。
渡辺謙さんがインタビューで語っていること
“彼は、傷ついた遺族にたちに寄り添っていこうとする。前の恩地だったら、会社を糾弾したり闘う姿勢を見せたと思うんです。そうではなく彼はもっと深いところに身を置こうと思った。それは、アフリカで勝ち得た根源的な何かがそうさせたと思ったんです”


沈まぬ太陽G

国見会長の奮闘や、日本航空の企業体質、汚い政治家どもの醜態をくわしく描いて欲しいところだが、時間の都合で、マイルドな感じの印象ですね。
でも、今の日本航空を見ても、あの頃から進歩していないお粗末な体質であろうと、推察できますからね。ちょうど、いい時期の公開にはなった。

もう一度、私を遺族のお世話係に、というところは、泣けるなぁ (T^T)

いよいよ、ラスト。映し出されるアフリカの太陽、これにはもう感激した。あの日、読んだ本の場所、太陽の見える場所まで、恩地さんに連れていってもらったような気がした。今の時代、波もなく、凪なのかもしれないが、その時、方向を指し示してくれるのは、己の身体から聞こえる声みたいなものじゃないかと思った。


※まだ、夕日が映ってるのに、席を立つ人が、バラバラ出てきて、感慨にふけれなかったなぁ。最後まで、きちんと観ましょう。このシーン、もう一回、観直したいよ!

沈まぬ太陽 2009年【日本】3時間22分
劇場鑑賞
監督:若松節朗/脚本:西岡琢也
渡辺謙(恩地元)/三浦友和(行天四郎)/松雪泰子(三井美樹)/鈴木京香(恩地りつ子)/石坂浩二(国見正之)他オールスターキャスト
★★★★★ 渡辺謙さん、熱演!

沈まぬ太陽3
◎原作:山崎豊子『沈まぬ太陽』(新潮文庫)
沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上)  沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下)
沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇
沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) 沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下)
◎歌:福原美穂 Cry No More(なんで泣きたくなっちゃうんだろうカップリング)
映画「沈まぬ太陽」オリジナル・サウンドトラック
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