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観た映画の感想が綴られてます。ゆったり、更新。
レバノン/LEBANON
2011年01月11日 (火) | 編集 |
これはレバノン戦争の、最初の一日を描いた物語。
カメラは、戦車内から外に出ず、物語は4人の戦車兵と、
彼らがスコープ越しに見る外部の光景のみで展開される。


レバノン写真1

狭狭苦しい戦車の中が、息苦しい。車内の床が水びだしで、あまり、いい戦車じゃないみたいだ。車内からは、狭い視界で、状況もほとんどわからない。詳しい作戦内容も、彼らは知らされておらず、撃て、と命令されれば、民間人に向けてでも、機械のように発砲しなければならない。
中にいれば、直接の銃撃、爆発は避けられる。が、これは、鉄の棺桶。そのなかに閉じ込められ、しだいに、人間の部分を殺されていってるに近い。

レバノン写真2

父の死と女先生の話が出てくる。死を前にして、すがりつくのは本能しかないんだろう。部隊は、いつしか、敵領内に侵入してしまっていたみたいで、一刻も早く、この場から、逃げ出さなくてはならなくなる。ただ、生き延びたいという気持ちだけで、やみくもに発砲し、狂気のように、戦車を走らせるだけ。結局、敵が誰かもわからないし、敵も味方も関係ない。小便がしたいという捕虜に、小便をさせてあげる。

操縦士イーガルが、静かに横たわる中、母に生存を伝えたという空しい連絡がはいる。初めて、外からのシーンに変わると、ひまわり畑に不釣り合いな戦車が停車しているだけ。
監督のサミュエル・マオスは、“イスラエルにとってのベトナム”と呼ばれたレバノン戦争に実際に従軍。「20数年を経て、やっと客観視して映画にすることができた。」と語っています。

小さな視点から見ると、ほんと、空しい出来事にみえる。

レバノン LEBANON 2009年【イスラエル・フランス・イギリス】90分
監督・脚本:サミュエル・マオス
出演:ヨアヴ・ドナット(砲撃手シムリック)、イタイ・ティラン(指揮官アシ)、オシュリ・コーエン(装填手ヘルツル)、ミハエル・モショノフ(操縦士イーガル)
★★★☆☆(3.5)
レバノン [DVD]
レバノンポスター
2009年ベネツィア国際映画祭<金獅子賞>を受賞しています。
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