2010年09月13日 (月) | 編集 |

朝日新聞夕刊連載小説『悪人』挿絵より (c)Tabaimo
束芋『断面の世代』を観に、大阪・中之島国立国際美術館まで行って来ました。
吉田修一『悪人』、この小説の朝日新聞連載時の挿絵を描かれていたのが、現代美術作家・束芋さんで、独特の、おどおどろしい絵には、惹きつけられるものがありました。束芋さんは、『にっぽんの台所』『にっぽんの通勤快速』など、現代の日本社会の風景を独自のアニメーションで表現されてる女性アーティストです。

展示方法自体も作品で、
中に、はいると、いきなり、真っ暗。
ほぼ、お化け屋敷状態の中、他の鑑賞者のいることは感じるだけです。
まわりがどんな方かもわからない、よく順路もわからない、
その体感も作品なんだと思います。
その空間に、団地の断面図の絵が、天井に映し出される作品より始まります。

一番、良かったのは、ハーフパイプ形状の壁に映像が映し出される《BLOW》という作品。ぼこぼこという泡が、下より発生し、両面に花が咲き、さまざまなものが生まれ出てくる。不気味な音が効果的。
今回は、『悪人』の挿絵も、全点、展示されてました。
人型を丁寧に浮き上がらせる彫刻的作品だと感じている。広がる世界は三次元的で 私も空気の粒子になってぐるぐると空間を見渡すことができる。文章から立ち上がる空気を本の間に、はさんで作る押し花のように二次元の紙の上に定着させた。(展示紹介文より)
束芋さんの描く曲線が、ぞくぞくっとした流れを感じさせるのが、たまらないですね。

小説『悪人』の中に、出てくる金子美保というヘルス嬢から、イメージした《油断髪》。終盤、祐一のことを語るたいへん重要な人物ですね。のれんのようにさがった長い髪の向こうに、恐ろしいものが見え隠れする作品で、秘めたエネルギーのような印象。

束芋 惡人
作り上げるのに2年かけた絵本『惡人』というのも出てます。それぞれの挿絵に、新聞から切り抜いた小説の言葉を張り付けたものです。もうひとつの『悪人』ワールドという感じで、これは、なかなか渋い本です。
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