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女と女と井戸の中
2010年10月07日 (木) | 編集 |
女二人による心理劇、残酷なる寓話。
この世の果てかのような荒涼たるオーストラリアの風景の中、静かに展開します。

女と女と井戸の中Photo1
あまり説明もなく、女性二人の表情を、じっくり読みとりながら、観るサスペンスで、監督は、若手女性監督のサマンサ・ラング。ヘスター役のパメラ・レイブは、は本作でオーストラリア・アカデミー賞主演女優賞を受賞、もうひとりの主役キャスリン役=ミランダ・オットーも素晴らしいです。
女と女と井戸の中THE WELL公式サイト

解説:エリザベス・ジョリーのベストセラー小説を映画化した心理サスペンス。主人公の女ふたりの間で錯綜するあこがれと嫉妬、愛と裏切り、信頼と疑惑。反発し共鳴しあうふたりを、ミランダ・オットーとパメラ・レイブが自然で説得力のある演技で熱演。さらに、サマンサ・ラングの女性ならでは繊細なディテールと丹念な演出によって、観客は最後まで、キャスリンの真実とヘスターの真実との間で揺れ動くことだろう。加えて、原題であり、秘密を吐き出す「心の隠れ家」として陰喩的に登場する“井戸”というモチーフと、ブリーチ・バイパスと呼ばれる技法を使った印象に残る“青い”映像が、リアリティと狂気とがないまぜとなった幻想的な世界を現出させている。

人里離れた家で、父親とふたりで住むヘスター。
40才をまわり独身の彼女が、新しい家政婦キャスリンを連れてくる。

キャスリンは、若くぶっきらぼうな子で、ろくに仕事も出来ないし、やる気もない女の子。それなのに、なぜか、へクターは、家族のように、友達のように、キャスリンという子に接していく。ヘスターは、足が悪く、おそらく、あまり学校へ通わなかったのかもしれない。彼女の中に、家庭教師さんと二人で行った輝かしき欧州旅行の思い出が蘇る。自由奔放なキャスリンの姿に触れ、彼女は、若き日を、取り戻そうとする。

そんな中、父が亡くなり、父の遺産をヘスターは手に入れる。父が亡くなった途端、首にかけていた鍵束をとるところは印象的だ。解放されたかのようなヘスターは、キャスリンとともに、贅沢三昧の日々を楽しみ始める。お金が底をつくと、農場まで売ってしまい、農場外れにある小屋に移り住む。

キャスリンは、施設で育った子で、家族の暮らしは知らない。ここにいれば、好きなことは言えるし、わがままも聞いてもらえる。彼女にとって、ここでの体験は、楽しいものであろうと思う。
お互いに孤独を埋め、欲しいものを与え、満足を得る、
こんな、あやういバランスの関係が、長く続くわけがない。

女と女と井戸の中Photo2

ある日、酔っぱらい運転していたキャスリンが男を轢いてしまう。怯えるキャスリンに代わり、ヘスターはその男の死体を庭の井戸に投げ込み、隠蔽しようとする。このあたりから、謎めいたスリラー風になり、かなり面白さは増す。

孤独を恐れるヘスターの心は、しだいに、キャスリンをこの家に束縛し、支配しようとしていたんですね。キャスリンは、それに対し、反発を感じる。

キャスリンが招き寄せた、もの言わぬ男。井戸の底に、ヘスターは感情を沈めようとし、キャスリンは、感情を拾おうとする。互いに、わかっていた。直視を避けてきただけかもしれないものを、井戸の奥底に、見てしまいます。哀しくえぐってくる物語が、恐いです。

女と女と井戸の中 THE WELL 1997/オーストラリア 102分
監督:サマンサ・ラング、脚本:ローラ・ジョーンズ 原作:エリザベス・ジョリー
出演:パメラ・レーブ(ヘスター)/ミランダ・オットー(キャスリン)
★★★★☆(4.5)
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ヘスターは、過去の自分に、支配されてしまっていたとも思えますね。すべてをなくすことで、ヘスターは、やっと呪縛から逃れたみたいなラストと思いたいです。キャスリンが、呪縛を解く鍵となったのかもしれません。

◎女と女の心理劇場 関連映画→『譜めくりの女
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