2008年09月06日 (土) | 編集 |

人が常に持ち歩いてるものとして“財布”、今では“携帯電話”等があるんだけど、常に人のそばにいる彼ら・彼女らは、持ち主のすべてを見聞きし知っているのだ。各章の登場人物が持つ“財布”が語り手となる、原作宮部みゆきのたいへん変わったミステリー。
財布一人称で語っていく原作を、さて、どうやって映像化しているのかな、というところに興味がありましたが、財布は、ナレーションでの存在となってました。財布さんの視点で描くには無理があるからな。原作が100万部を超えるベストセラーのせいか、豪華キャストですね。
ひき逃げ事件で死亡した男には、妻・森元法子を受取人とした莫大な保険金がかけられていた。時期を同じくして、塚田和彦の婚約者・西方早苗が殺される。彼女も億単位の保険金がかけられていた。怪しい二つの事件。この事件を追うのが、刑事・響武史と探偵・河野康平だ。
やがて、森元法子と塚田和彦の二人に関係にあることがわかる。保険金殺人事件疑惑、ワイドショー好みのネタとなり、塚田和彦がテレビに出ない日はないほど報道合戦がエスカレートしていく。
この原作自体が、後の作品『模倣犯』の前兆らしき雰囲気があるので、
なんだか、ワイドショー画面がやたら出てくる。
メディア的部分をやたらとクローズアップしてるので、
ちょっと映画“模倣犯”を思い出してしまう。
またか、と思い、ちょっとうんざりしながら観ました。
私が原作を読んで面白く思ってたところは、
犯人が、証拠品ともなろう被害者の遺留品を、
わざわざ財布に入れ肌身離さず持ち歩いていたところでした。
口では偉そうなことを言ってるのに。なにか悲しいものがありますよね。
探偵の財布の章で、探偵さんは、殺された依頼人・西方早苗のイヤリングを財布の中に大事にしまい込んでいます。目撃者の財布の章でも、バスガイドのマコちゃんは、上京したとき、友達とお揃いの財布を買ってるわけなんですよね。
人には言えない、心の中にあるすごく大事なものまで、しまってあるのが財布なわけなんです。物言わぬ財布が、持ち主の気持ちを受け止めて何かを思ってくれてるようなんですけどね。
そのあたりが、もの悲しいなぁと思ってたので、もっと地道でいいから、各章の小さなエピソードを積み重ねていく形で進めて欲しかった。
メディア部分や自己顕示欲みたいな部分は、
あまり取り上げずに、成立させても、面白かったんじゃないでしょうか。
『長い長い殺人』 2007年
監督:麻生学
出演:第1章 刑事の財布 長塚京三(響武史)
第2章 少年の財布 小清水一揮(小宮雅樹)
第3章 探偵の財布 仲村トオル(河野康平)
第4章 目撃者の財布 平山あや(佐藤雅子)
第5章 旧友の財布 大森南朋(宮崎優作)
第6章 証人の財布 酒井美紀(木田恵梨子)
谷原章介(塚田和彦)
窪塚俊介(三木一也)
伊藤裕子(森元法子)
西田尚美(西方早苗)
私の感想:★★★☆☆ ワイドショー型ミステリーになっちゃった。
原作:宮部みゆき 長い長い殺人 (光文社文庫)
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